感情は味わって過ぎ去らせる──抑圧ではなく観照が癒しをもたらす

感情は味わって過ぎ去らせる──抑圧ではなく観照が癒しをもたらす

怒り、悲しみ、不安、孤独……。
湧き上がる感情を「なくしたい」と思うのは、自然なことです。

でも、感情は“消すもの”ではなく、“観るもの”。
感じきることなく押し込めた感情は、形を変えてあなたの思考や行動を操るようになります。

癒しとは、感情をなくすことではなく、
その感情が「過ぎ去っていく」のを見守ることなのです。

感情をなくそうとしても、なくならない

感情が湧き上がったとき、多くの人は「この感情をなくしたい」と思います。
けれど、感情は意志でコントロールできるものではありません。

怒りを抑えようとすればするほど、心の奥でそのエネルギーは大きくなり、いつか別の形で噴き出します。

「感じないようにしよう」としても、それは“なくなった”のではなく、ただ“見えなくなった”だけ。
そして、無意識の中でその感情は抑圧として残ります。

抑圧された感情は、あなたを操る

感じきれなかった感情は、意識の下でずっと「完了したい」と待っています。

その未完了の感情は、本人が気づかないところで思考や行動をコントロールし、
本来の望みとは違う方向へとあなたを導きます。

たとえば、
・怒りを抑えた人は、他人に嫌われないように自分を抑える
・悲しみを感じ切れなかった人は、常に明るく振る舞おうとする
・恐れを見ないようにした人は、完璧さを追い求める

こうして人は、感情を感じないための“防衛的な生き方”を身につけていきます。
でもそれは、望みを生きるための行動ではなく、恐れを避けるための行動です。

感じて、見守るだけでいい

では、どうすればいいのか。

それは、とてもシンプルです。
湧き上がった感情をそのままに感じ、過ぎ去るのを見守ること。

感情は、自然現象のようにやってきて、去っていきます。
それを「良い」「悪い」とジャッジせず、ただ身体の感覚とともに観ていると、やがて波は静かに収まっていきます。

感情に飲み込まれるのではなく、その背後にある“観ている意識”に気づくこと。
そこにこそ、本当の自由があります。

感情は敵ではなく、道しるべ

湧き上がる感情は、あなたが“今ここ”にいることを教えてくれるサインです。

感情を通して、私たちは自分の内側の真実や、まだ受け容れられていない部分を知ります。

だからこそ、感情をなくす必要はありません。
感情を観照することが、あなたを“本当のわたし”へと導いてくれるのです。

感じることを恐れず、観て、味わって、過ぎ去らせる。
それが、癒しであり、自由への道です。